ブチルゴム(IIR)とは?
~特性と使用用途について~
ブチルゴムはイソブチレンと少量のイソブレンのカチオン共重合によって生成される合成ゴムです。
ブチルゴムの構造は、イソブチレンのメチル基がポリマー主鎖を取り囲み、主鎖の回転運動を抑制していること、ジエン系ゴムと比較して主鎖の二重結合がかなり少量であることが特徴的です。
この特徴から、気体をほとんど透過しないという性質を持ちます。また、主鎖の運動性が低いことから、内部摩擦が増大し、反発弾性が極めて低いという性質も示します。
ブチルゴムの構造
ブチルゴムのポリマー
ブチルゴム(IIR)の特徴
※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる
極めて低いガス透過性
電気絶縁性に優れる
耐油性に劣る
・長所
イソブチレンの立体構造により、極めてガス透過性が小さいです。また、反発弾性が小さいため、防振材、防音材として優秀な特性を持ちます。
主鎖の二重結合が少ないため、耐候性、耐熱性、耐オゾン性、耐薬品性に優れた性能を示します。これらの安定性は主鎖に全く二重結合をもたないEPDMに次いで良好です。
電気絶縁性、耐コロナ性、耐トラッキング性にも優れ、電線被覆材に用いられています。
高温における力学特性、耐水性、耐極性溶媒性にも優れています。耐寒性も優秀で-50℃程度でも柔軟性を持つ配合もあります。
ブチルゴムは延伸によって結晶化するので、純ゴム配合でも引張強さが大きいことも特徴です。
・短所
他のジエン系ゴムと比較して、主鎖の二重結合が少ないため架橋反応速度が遅いですが、これは加硫剤の開発によりある程度改良されています。非極性であるため、金属やほかのゴムに対する接着性と耐油性に劣ります。
ポリマーの状態で腰が強く、ロール加工性が悪いです。他のジエン系ゴムとの混合性はあまりよくありません。
・ハロゲン化ブチルゴム
ハロゲン化ブチルゴムはブチルゴムを炭化水素溶媒に溶解し、50℃程度の温度条件下で塩素や臭素を導入して製造されます。
ブチルゴムの架橋速度改善、ジエン系ゴムとの混合性や金属あるいは他のゴムとの接着性の改善のために開発されたものです。
塩素化化ブチルゴムや臭素化ブチルゴムともブチルゴムの物性を低下させず、ブチルゴムと比較して耐熱性に優れ、加硫速度が速く、接着性が良く、NR(天然ゴム)やSBR(スチレンブタジエンゴム)などとの混合が容易になっています。
ブチルゴム(IIR)の主な物性値
硬さ( デュロA ) | 20 ~ 90 |
引張強さ( MPa ) | 5.0 ~ 15.0 |
伸び( % ) | 100 ~ 800 |
使用温度( ℃ ) | -40~ 120 |
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1016~ 1018 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
ブチルゴム(IIR)の主な用途
ブチルゴムはその低いガス透過性と低い反発弾性からタイヤのインナーチューブに用いられています。
自動車部品だけではなく、防振特性を生かして生活用品や家電などの防振材、防音材にも利用されています。
使用される分野 | 製品名 |
自動車部品 | タイヤのインナーチューブ・防振材 |
工業用品 | コンベヤベルト・ホース |
建築用部品 | ルーフィングシート |
参照:
・明間博(2000)「ブチルゴム」奥寺通夫・粷谷信三・西敏夫・山口幸一『ゴムの事典』pp.176-178 朝倉書店
・長野早男(1983)『合成ゴム加工技術全書 ブチルゴム』大成社