熱可塑性エラストマー(TPE)概要

TPEはゴムポリマーの様に常温で非晶性(柔らかい)ポリマーと樹脂ポリマーの様に常温で結晶性(硬い)ポリマーの相性が良いもの組み合わせて作られており、常温時には加硫ゴムの様な弾性を有します。TPEは加硫ゴムと違い溶融温度になった際に可塑化します。冷却により再度固化し再び加硫ゴムの様な弾性を持ちます。また、熱に対して樹脂と同様の性質を持ち合わせていることから樹脂同様に様々な成形方法が使用でき、加硫ゴムと比較すると加工費が安価で形状のバリエーションも多いです。  

加硫ゴムとTPEの構造

加硫ゴムとTPEは柔軟性のある非晶性ポリマーを架橋点または結晶性ポリマーにより繋ぎ合わせている構造を取っており、両者とも常温下では同様の働きをします。この場合の架橋点と結晶性ポリマーをハードドメインといいます。

加硫ゴム

両者とも非晶性ポリマーが
ハードドメインにより
繋ぎ合わされている。

 


 
TPE

加硫ゴムとTPEが弾性を得られる理由

非晶性ポリマーは絡まり合っている状態が安定的であり、小さな応力(変位)であれば元の形状に戻ります。これをエントロピー弾性と言います。但し、エントロピー弾性以上の大きな応力に対しては非晶性ポリマーどうしが滑ってしまい、元の形状には戻れず分子どうしが滑った状態からエントロピー弾性が働きます。それに対し加硫ゴム及びTPEはハードドメインにより非晶性ポリマーがつながっているため、大きな応力がかかっても非晶性ポリマーどうしは滑らず分子構造を維持します。また、変形した状態からは非晶性ポリマーのエントロピー弾性により元の形状へ復元します。

2024.9.10エラストマー-1

加硫ゴムとTPEの違い

加硫ゴム-1
TPE

加硫ゴムのハードドメインは架橋点で熱をかけても硬化したままであるため加硫ゴム自体も硬化したままです。それに対しTPEのハードドメインは熱可塑性の結晶性ポリマーで、融点以上の熱をかけると可塑化します。また、結晶性ポリマーが可塑化する事によりハードドメインが無くなりTPE自体が流体になります。但し、結晶性ポリマーの温度が融点を下回ると結晶性ポリマーが再度固化し、ハードドメインを形成するため再びゴムの様な弾性を有するようになります。

長所

短所

加工性の違い

工程 加硫ゴム TPE
混練り
材料のプレフォーミング
成形(成形時間) (長い) (短い)
1shotあたりの取り数
仕上げ
検査

工程が少ないため加硫ゴムと比較してTPEの方が比較的安価になる傾向あり。

TPEの種類と特徴

項目 TPS TPO TPVC TPU
結晶性ポリマー ポリスチレン ポリプロピレン PVC ポリウレタン
非晶性ポリマー BR or IR EPM PVC or Oil

ポリエステル
or
ポリエーテル

硬さ(Duro-A) 40~70 60~90 40~70 80以上
引張強さ(MPa) 9.8~34.3 2.9~18.6 29.4~49 25.5~39.2
伸び(%) 500~1200 200~600 400~500 300~800
反発弾性(%) 45~75 40~60 30~70  30~70
耐熱温度(℃) 80 120 100 100
耐油性 ×
耐候性 ×~〇 △~〇 ×~△
脆化温度(℃) -70以下 -70以下 -50~-30 -70以下
使用用途

柔軟性・弾性が高い

ハンドル・
グリップ

耐候性・耐熱性が高い

車のバンパー・
防水シート・屋根材

耐油性・耐薬品性が高い

医療用チューブ・
耐油性ガスケット

耐摩擦性・柔軟性が高い

携帯ケース・
シューズのソール

 

TPEの主な用途

工具のグリップ、ケーブルグロメット、ホース、玩具、スポーツ用品等に使用されています。
またTPEの中には衛生性が高いグレードがあり、そのグレードでは、食品梱包材、歯ブラシの滑り止め、医療用チューブ等に使用されているものもあります。

参照:新版ゴム技術のABC  編集・発行:日本ゴム協会東海支部

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