ニトリルゴム(NBR) とは?
~特性と使用用途について~
NBRはアクリロニトリルとブタジエンの共重合した合成ゴムです。乳化重合法により重合され、凝固・乾燥を経て製造されます。
重合温度が25~50℃で重合されるものをホットラバー、25℃以下で重合されるものをコールドラバーと呼びます。コールドラバーはホットラバーに比べて、重合速度が速く、分子量分布の狭いポリマーが得られ、加工性や物性に優れています。そのため、約80 %のNBRがコールドラバーで生産されています。ホットラバーは接着剤向けに多く使用されています。
NBRはアクリロニトリルの含有量によって特性が変化します。
NBRの構造
NBRのポリマー
ニトリルゴムの特徴
※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる
優れた耐油性
求める特性によってANの変量可能
耐候性、耐熱性に劣る
・長所
NBRは、ニトリル基(-CN)を有するため極性があります。そのため一般ゴムの中で最も耐油性に優れています。
ランダム共重合体なので規則性が無く、非結晶性です。そのため、アクリロニトリルとブタジエンの比率を変化させることが可能で、結合アクリロニトリル量(AN量)により、物性も影響されます。
NBR中の結合AN量が多くなると、耐油性、耐摩耗性の向上、引張強さ、硬さの増大、反発弾性の低下、極性ポリマーとの相溶性がよくなるという傾向があります。ムーニー粘度(分子量)によっても物性が変化し、ムーニー粘度が高くなると、引張強さの増大、圧縮永久ひずみが小さくなる傾向があります。
名称 | 低ニトリル | 中ニトリル | 中高ニトリル | 高ニトリル | 極高ニトリル |
アクリルニトリル含有量(%) | 24以下 | 25~30 | 31~35 | 36~42 | 43以上 |
特性 | |||||
・短所
NBRは主鎖に二重結合を有するので耐熱性、耐候性に劣り、ニトリル基(-CN)を有することにより、電気絶縁性に劣ります。また非結晶性なので強度を出すため、補強剤(カーボンブラック 等)を必要とします。
NBRの短所である耐熱性、耐候性を向上させるためにH-NBRが開発されました。
・ポリマーブレンド
NBRは極性が高いため、フェノール樹脂やPVC(ポリ塩化ビニル)など極性樹脂との相溶性が良好です。ブレンドすることで、耐オゾン性、衝撃強度が向上します。
原料コストの削減、耐寒性を向上させるためにSBRやBRとブレンドすることもあり、ブレンド比やNBRの結合AN量を変えることでそれぞれの目的に応じた製品が得られます。
ニトリルゴムの主な物性値
硬さ( デュロA ) | 40 | 60 | 90 |
引張強さ( MPa ) | 12.6 | 13.0 | 12.0 |
伸び( % ) | 600 | 750 |
230 |
使用温度( ℃ ) | -30~ 100 | ||
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 109~ 1010 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
ニトリルゴムの主な用途
NBRは優れた耐油性を生かして自動車部品や工業用パッキンなどのオイル回りの製品に多く用いられています。また電線・ケーブルの外装、接着剤などにも使用されています。
しかし、オゾンに対する耐性が弱いため、日光などの使用環境に注意が必要です。
使用される分野 | 製品 |
自動車部品 | オイルシール、Oリング、オイルホース |
工業用品 | パッキン、印刷ロール、接着剤、ガスケット |
参照:
・ニトリルゴム 発行所:株式会社大成社 著者:小室経治、上田明男、和田克郎、和久哲夫
・新版ゴム技術のABC 編集・発行:日本ゴム協会東海支部