エチレンプロピレンゴム(EPDM)とは?
~特性と使用用途について~
エチレンとプロピレンの共重合体をエチレンプロピレンゴム(EPM)といい、1955年に初めて合成されました。プラスチックとしての性質をもつポリエチレンにプロピレンを導入することで結晶化が阻害され、ゴムとしての性質を示します。
その後、硫黄加硫を可能にするために第3成分としてジエンを共重合させたエチレンプロピレンジエンジエンゴム(EPDM)が開発され、工業的に広く使用されることになりました。
第3成分として用いられるジエンにはENB(エチリデンノルボルネン)のほか、DCPD(ジシクロペンタジエン)、HD(1,4-ヘキサジエン)があり、中でもENBを用いたEPDMが加硫速度が速く物性のバランスもとれているため、最も多く用いられています。また、重合時においてDCPDが最も分岐しやすいという特徴を持っています。
EPDMの加硫方法には主に硫黄加硫と過酸化物加硫があり、二つの一番大きな違いは耐熱性です。硫黄加硫での最高使用温度は70℃程度、パーオキサイド(過酸化物)加硫では150℃です。
グレードにはエチレン含量、ジエン含量、分子量と分子量分布が異なるものが存在し、強度、圧縮永久ひずみ、加工性、低温特性などの狙った特性に合わせて使い分けられています。
EPDMのポリマー
主なEPDMの構造
そのほかのジエン構造
エチレンプロピレンゴム(EPDM)の特徴
※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる
耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れる
耐油性に劣る
・長所
EPDMは主鎖に二重結合をもたないゴムであるため、耐熱性、耐老化性、耐オゾン性、耐候性においてジエン系ゴムと比較して優れています。
耐オゾン性が良好なCRやIIRと比べても格段に優れています。この耐オゾン性は配合などで変化することはなく、EPDMの本質的な性質です。
絶縁体として優れた電気的特性を示し、IIRと同程度の体積固有抵抗をもちます。
耐薬品性に優れ、アルコール、エステルといった極性の強い溶剤、硫酸などの無機酸、アルカリに優れた耐性を示します。
油展性、充填剤添加性が非常に優れるため、本来の性能をそれほど落とさずに製品のゴム分を下げることができ、材料コストの面でほかのゴムと比べて有利です。
パーオキサイド加硫では最高使用温度が150℃となり、耐熱用途での使用も可能になります。
・短所
鉱物油やトルエンなどの有機溶剤と親和性が高く、耐油性においてほかのゴムに比べかなり劣ります。
また、生ゴムのロール巻付性があまりよくありませんが、粘着剤やオイルを配合することである程度改良されます。
硫黄加硫のEPDMの耐熱性は悪く、最高使用温度は70℃程度までです。EPDMは可燃性のゴムであるため耐炎性はありません。
エチレンプロピレンゴム(EPDM)の主な物性値
硬度( デュロA ) | 50 | 70 | 90 |
引張強さ( MPa ) | 15.5 | 20.0 | 14.0 |
伸び( % ) | 700 | 300 | 150 |
使用温度( ℃ ) | -40~ 120 | ||
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1012~ 1015 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
エチレンプロピレンゴム(EPDM)の主な用途
EPDMは比較的安価であり、耐熱性、優れた耐候性、耐オゾン性を持つことから、自動車用部品を中心に様々な製品に利用されています。
注意すべき点としては耐油性が良くないので、油に触れる可能性がないか考える必要があります。
使用される分野 | 製品 | ||
自動車用部品 | ホース・シール材・防振ゴム・ウェザーストリップ | ||
建築材料 | 防水シート・シール材 | ||
電気用ゴム部品 | 高圧用ケーブル・コネクター | ||
工業用品 | 耐熱コンベヤベルト・耐薬品用ロール・耐熱ホース |
参照:
・堤文雄(2000)「エチレン-プロピレン共重合ゴム」奥寺通夫・粷谷信三・西敏夫・山口幸一『ゴムの事典』pp.179-186 朝倉書店