ゴムの摩耗試験の方法
~耐摩耗性を上げる手法とは?~
ゴムの摩耗とは?
摩耗は摩擦により物体表面から材料の一部が脱落し減少していく現象です。ゴムの摩耗は破壊現象の1つとして考えられます。摩擦形態は接触圧力、摩擦速度、温度及び摩耗材の状態などでも変化します。実際の使用環境ではこれらの摩耗形態が複合して起こるとされます。
ゴムの摩耗の形態分類は次の5つがあります。
①アブレシブ摩耗
硬く鋭い突起がゴム表面を大きい摩擦力で引っかく時に生じる摩耗。
④ころ状摩耗
消しゴムについてよく見られるころ状摩耗くずが生じる摩耗
②凝着摩耗
滑らかな摩耗材の面とゴム表面とが相手面に移着した時に生じる摩耗。
⑤その他の摩耗
化学的な腐食摩耗、流体中の浸食摩耗など。
③疲労摩耗
摩擦面が繰り返し変形を受ける事によって生じる摩耗。
摩耗と摩擦の違い
摩耗
摩擦により物体表面から材料の一部が脱落し減少していく現象。
摩擦
接触している物体と物体とで相対運動がおこる時にその運動を妨げる力が働く現象。
摩擦については摩擦試験が行われます。
JISには規定されていませんが、これらの現象を理解する尺度が摩擦係数 μです。
摩擦係数の算出方法としては、試験片に接している荷重 Wの試験体をある速度で引っ張るのに要する力 Fを測定します。この時FとWの間の関係を F=μWとしたとき、μを摩擦係数と呼び、二つの表面間の摩擦の程度を表現します。
μには静摩擦係数と動摩擦係数があり、金属どうしの摩擦ではμは定数となることが知られていますが、ゴム材料では荷重Wや引張速度によってμは変わります。
ゴムは非常に高い摩擦係数と耐摩耗性を有している材料です。 ゴム材料が接する面はタイヤ、靴底など道路の状況、湿潤状態などの条件で摩擦係数も色々と変化します。摩擦も実際はなかなか複雑な現象です。
摩耗試験の方法
ゴム製品が使用される状況は変化に富んでおり、接触する相手材の種類や表面状態も様々な為、実際に使用する状況を再現させるのは難しいです。
摩耗現象も複雑で条件により色々な摩耗形態が生じる為、摩耗試験は多くの試験方法が規定されています。
いずれも砥石のような異種材料とゴム材料を接触させてこすり合わせて摩耗させ、ゴムの減少量を計測する試験になります。
JISにはウイリアムス摩耗、アクロン摩耗、ランボーン摩耗、ピコ摩耗、DIN摩耗、テーパー摩耗が規定されています。
ランボーン摩耗試験はタイヤのトラッド材の試験によく用いられています。
ウィリアムス摩耗試験機
耐摩耗性を持たせるには?
ゴム種類によって耐摩耗性に差があります。
耐摩耗性の良い材料
ウレタンゴム、天然ゴム、H-NBR など
耐摩耗性の悪い材料
シリコーンゴム、多硫化ゴム など
耐摩耗性 | ||
---|---|---|
◎ | 〇 | △~× |
NR、IR、SBR、BR、CR、NBR、CSM、U、FKM |
EPDM、IIR、ACM |
Q、T |
- 配合剤のカーボンブラックについてストラクチャーの小さい種類を配合し強度を上げる。
- カーボンブラックの添加量を増加させ、ゴム硬さを上げることで耐摩耗性が向上させる。
- 潤滑剤を配合しゴムの滑りをよくする。
参照:
・JISK6264-2-2005 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐摩耗性の求め方
・ゴム技術入門 (日本ゴム協会)
・ゴム試験法 (日本ゴム協会)
・ゴム協会誌 ゴムの摩耗理論(阿波根 朝浩)