アクリルゴム(ACM)とは?
~特性と使用用途について~
ACMはアクリル酸エステルが主成分で常圧下での乳化重合によって合成されます。
アクリル酸エステルにはアクリル酸エチル(EA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メトキシエチル(MEA)の3種類があり、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いられます。また、架橋を可能にするためや加工性を改善する目的でコモノマーと共重合されています。この重合で用いるモノマーは選択の幅が広く、アクリルゴムの高機能化に向けて開発が行われています。
異種材との複合化も可能であり、塩化ビニル樹脂の改質やフッ素ゴムとの複合化などに用いられています。
ACMの構造
ACMのポリマー
アクリルゴム(ACM)の特徴
※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる
高い耐熱性と耐油性を両立
性能とコストのバランスが良い
耐寒性に劣る
・長所
主鎖に二重結合を含まないため、耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れており、これらはフッ素ゴム、シリコーンゴムに次いで良い性能を持ちます。
側鎖エステル結合の極性から、潤滑油、燃料油ともに優れた耐性を示します。
・短所
耐寒性が欠点の一つでしたが、改良によって-40℃でも使用可能なアクリルゴムも開発されています。耐寒性を向上させると耐熱性が低下する傾向があります。
アクリルゴム(ACM)の主な物性値
硬さ( デュロA) | 50 | 60 | 70 |
引張強さ( MPa ) | 10.0 | 13.0 | 11.0 |
伸び( % ) | 250 | 300 | 200 |
使用温度( ℃ ) | -20~ 170 | ||
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 108~ 1010 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
アクリルゴム(ACM)の主な用途
アクリルゴムは高い耐熱性と耐油性を兼ね備えていることから、高温油に触れる部品やオイルシールとして多く用いられています。NBRでは耐熱性を満たせない部品にFKMよりも低価格であることから採用されることがあります。
使用される分野 | 製品名 | ||
自動車部品(9割程度) | ホース・Oリング・ガスケット・シール材・パッキン | ||
建築用部品 | シール材・接着剤 |
参照:
・越村克夫(2000)「アクリルゴム」奥寺通夫・粷谷信三・西敏夫・山口幸一『ゴムの事典』pp.188-189 朝倉書店