防振ゴムは機器からの振動を軽減することを目的として使用されるゴムのことです。

機器を振動から守る、逆に機器の振動から周囲を守るなどの役割があります。

(ボルト付きのものや丸形、V型、倉型、クッションゴムなど目的とする防振効果や取り付け方法によって形状を変更することができます。ボルト付きの防振ゴムは六角ナットを使い容易にとり付けられます。)

防振ゴムのイメージ図

振動が伝わる 

振動が抑制される


防振ゴムは防振したい振動や、防振したい機器、取り付けの方法によって多様な形状の選択が可能です。

また同じ形状でも、ゴム材質や硬さを変化させることで防振の能力も多様に変化させることができます。

ブランコの往復にかかる時間は、乗る人や振れ幅が変わっても一定であるように、全ての物体は外部からの振動に対して最も振動しやすい振動数を持っています。このような最も振動しやすい振動数のことを固有振動数とよびます。

防振ゴムによって支持された機械にも固有振動数があり、固有振動数ωn (Hz)は、機械の質量m (kg)と防振ゴムの動的ばね定数Kd (N/mm)を用いて以下のようにあらわされます。

式1-3

 

機械からの振動を台に伝わるのを防ぐ場合、振動源である機械からの振動(力、もしくは振幅)と台に伝わった振動(力、もしくは振幅)の比率のことを振動伝達率といい、防振ゴムの性能を評価する指標として用いられています。

機器の振動の力をF0 (N)、台に伝わる振動をF (N)とすると、振動伝達率Trは以下のようにあらわされます。

式2-3

 

機械の振動と、防振したとき機器の固有振動数の比のことを振動数比とよびます。

振動数比uは機械により発生する振動数ω (Hz)と防振支持したときの機器の固有振動数をωn(Hz)として、以下のようにあらわされます。

式3-2

振動伝達率Trを振動数比uで表すと以下の式になります。

式4-1

振動伝達率Trと振動数比uの関係をグラフにすると以下のようになります(Tr-u図)。

振動伝達率(T_r-u図)

図 振動伝達率(Tr-u図)

振動伝達率Trのグラフで、振動伝達率Trが1以上の領域を共振域、振動伝達率Trが1以下の領域を防振域とよんでいます。

防振設計では振動伝達率Trを防振域である1以下とするために振動数比uが√2以上になるような防振ゴムの選定を行います。一般的には振動数比uが2以上になるようにします。

振動数比uと振動伝達率Tr、防振効果の一覧を次の表にまとめました。

振動比 振動伝達率 防振効果
u=0 T=1 効果なし
u=1 T→∞ 共振
u=√2 T=1 効果なし
u>√2 T<1 効果有

どの防振ゴムにも共振域と防振域がありますが、やわらかい防振ゴムほど共振域が狭く、防振域が広くなります。ただし耐久性は低い傾向にあります。対して硬いゴムは共振域が広く、防振域が狭くなりますが、ヘタリが小さいなど耐久性が高い傾向にあります。

またばね定数は低温時に高く、高温時に低くなる性質があり、使用する温度域によっても防振性能は変化します。

防振ゴムの材質は安価な天然ゴム(NR)、比較的に耐熱性の良好なエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、耐油性の高いクロロプレンゴム(CR)、減衰性能の高いブチルゴム(IIR)など、使用環境や耐熱温度によって防振ゴムに適した材質も異なります。

防振したい振動数と、耐久性のバランスを考慮して防振ゴムを選定する必要があります。

 

防振設計の流れの一例を以下に示します。

①防振したい機器が使用される環境を調査します。

水や油にさらされる場合(耐水性、耐油性)、屋外で使用される場合(耐候性)、高温で使用される場合(耐熱性)等、使用環境での防振ゴムの耐久性を考慮してゴム材料の選定をします。

②防振したい機器の重さ(防振ゴムに加わる荷重)を決める。

防振したい機器の重さによって、使用できる防振ゴムの形状が異なります。

③防振したい周波数を測定、選定します。

機械がどの振動数で振動しているのか測定します。

④支持位置のレイアウトを決める。

防振ゴムは引っ張りに対して弱く防振効果を発揮できないため、圧縮方向の荷重がかかるようにレイアウトします。また取り付けた時のねじれや荷重の偏りがないようにします。

⑤支持点数を決める。

防振ゴムの性能は防振ゴムに加わる荷重によって変化します。防振ゴム1個当たりに加わる荷重が大きくなるほど防振の性能は高くなりますが、耐久性は悪くなります。

支持点数と防振性能のバランスを考慮して防振ゴムの耐荷重を超えない範囲で支持点数を少なくします。

⑥防振ゴムの動的ばね定数を計算する。

防振ゴム1個あたりに加わる荷重と、防振したい周波数の2分の1以下の固有振動数を目安にして、防振ゴムに要求される動的ばね定数を計算し、選定します。

 ⑦防振性能の確認

選定した防振ゴムを機器に取り付け、振動の減衰を確認します。


JIS K 6422で防振ゴムの性能を区分けしています。

静的ばね定数の許容範囲による性能区分

区分 A B C D E
許容範囲 ±10% ±12.5% ±15% ±20% 規定しない

動的ばね定数の許容範囲による性能区分

区分 A B C D E
許容範囲 ±10% ±15% ±20% ±25% 規定しない

動倍率による性能区分

区分 A B C D E
動倍率 1.2%未満 1.2%以上
1.5%未満
1.5%以上
2.0%未満
2.0%以上 規定しない

損失係数による性能区分

区分 A B C D E
損失係数 0.3%以上 0.2%以上
0.3%未満
0.1%以上
0.2%未満
0.1%未満 規定しない

防振ゴムが使われている例として次の4つなどがあります。

  • コンプレッサの振動が土台に伝わらないようにする
  • 路面からの振動を車内に伝わらないようにする
  • エアコン室外機の振動(騒音)を軽減する
  • ロボットの振動から周辺機器を保護する

参照:

JIS K 6422防振ゴム性能区分

JIS K 6385 防振ゴム試験方法

JIS K 6386 防振ゴム材料

機械振動工学 培風館

新版ゴム技術のABC 社団法人日本ゴム協会東海支部

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