クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)とは?
~特性と使用用途について~
ポリエチレンを塩素化およびクロロスルホン化して合成されるゴムです。デュポン社のCSM「ハイパロン」の商品名でも知られています。
塩素化による塩素量、クロロスルホン化による硫黄量、原料ポリエチレンの種類によって物性が変化し、種々のグレードがあります。塩素量は20~45%で、塩素量の増加に伴いポリエチレンの結晶性が低下してゴム弾性が発現します。一方で極性が高くなり、ガラス転移点(Tg)が上昇します。
CSMに含まれる硫黄量は多くのグレードで1%程度です。硫黄量と架橋点の数は比例関係にあり、硫黄量の増加に伴って架橋密度が増加します。
線状高密度ポリエチレンを原料としたCSMは機械的強度と加工性に優れ、一般工業用途で用いられています。低密度ポリエチレンを原料とするCSMは溶液粘度が低いことから、塗料や接着剤などに用いられます。
また、側鎖にアルキル基を導入したアルキル化CSM(ACSM)もあります。ACSMはアルキル基の存在により最適塩素量が低く、耐熱性、低温特性、動的特性に優れています。
クロロスルホン化ポリエチレンの構造
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)の特徴
※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる
耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れる
自由な着色が可能
・長所
主鎖に二重結合をもたないポリマーであるため耐候性、耐オゾン性、耐熱性に優れます。各種のゴムの中でも明色性に優れており、比較的自由な着色が可能で、長期の屋外暴露における変色も小さいです。
また、CRに似た物性を示しますが、CR以上の耐摩耗性、耐油性、電気特性、難燃性、耐炎性、耐酸・アルカリ性を持ちます。
・短所
圧縮永久ひずみに劣るほか、低温で結晶化しやすく、耐寒性があまりありません。優れた性能を持ちますが、コストが高いです。
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)の主な物性値
硬さ( デュロA ) | 50 ~ 90 |
引張強さ( MPa ) | 7.0 ~ 20.0 |
伸び( % ) | 100 ~ 500 |
使用温度( ℃ ) | -30~ 130 |
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1014 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)の主な用途
CSMは自由な着色が可能で屋外の使用でも変色が小さいことや耐候性に優れるという点から、ゴムボートやエスカレーターの手摺りなどへの利用が特徴的です。
また、優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を持つため、ホースなどの自動車部品や電線などにも用いられています。
参照:
・亀澤光博(2000)「クロロスルホン化ポリエチレン」奥寺通夫・粷谷信三・西敏夫・山口幸一『ゴムの事典』pp.186-187 朝倉書店