天然ゴム(NR) とは?
~特性と使用用途について~
天然ゴムはへベアブラジリエンシス (Hevea brasiliensis)というゴムの木(パラゴムノキ)の樹液から採取されるラテックス(約30%ゴム分含む)を凝固、加工したものです。
主な産地は東南アジア、中南米、アフリカの高温多湿の熱帯地域です。アジアで世界の90%以上を生産しています。
天然ゴムはRSS (Ribbed Smoked Sheet)とTSR (Technically Specified Rubber) に分類されます。
TSR
ラテックスが収集カップの中で自然凝固したもの(カップランプ)を粉砕し、洗浄、熱風乾燥を行った後、ブロック状にプレス成型したゴムです。
「技術的格付けゴム」とも呼ばれ、技術的規格に基づいて格付けされています。
TSRは生産国によって名称が異なり、SMR (Standard Malaysian Rubber , 標準マレーシアゴム)が代表的ですが、他にタイのSTR、ベトナムのSVR、インドネシアのSIR、スリランカのSCR、シンガポールのSSRなどがあります。
RSS
ラテックスを酸凝固させ、ロールでシート状に成形したもの(USS : unsmoked sheet)を燻煙したゴムです。
「視覚的格付けゴム」とも呼ばれ、目視による外観、色、ごみの量などにより格付けします。
また、RSSは等級があり、1X号、1号、2号、3号、4号、5号に格付けされています。
天然ゴムのポリマー
天然ゴムの構造
イソプレンのシス型でシス-1,4-結合を取ります。
天然ゴムの特徴
※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる
優れた機械的強度
最もゴムらしい反発弾性
耐熱性、耐油性に劣る
・長所
NRはシス-1,4-結合で構成されるため分子構造の規則性が高く、機械的強度、反発弾性、耐摩耗性に優れています。
ゴムの超高分子量成分を含むことから素練りが必要ですが、素練りにより、ゴムが可塑化され成形が容易になります。
また、NRは接着性が良好であり、タイヤなど幅広い製品に使用されています。
・短所
NRは主鎖に二重結合を有するので耐熱性、耐オゾン性、耐候性に劣ります。
また、NRは非極性のため耐油性に劣ります。さらに、二重結合の隣のメチル基(-CH3)が電子供与性のため、ゴムの安定性は低くなります。
天然ゴム(NR) の主な物性値
硬さ( デュロA ) | 50 | 65 | 70 |
引張強さ( MPa ) | 28.0 | 30.0 | 25.0 |
伸び( % ) | 600 | 460 | 440 |
使用温度( ℃ ) | -40 ~ 80 | ||
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1010~ 1015 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
天然ゴムの用途
天然ゴムは機械的強度、反発弾性、耐摩擦性に優れているため、トラック、バス、航空機などの大型タイヤなどの工業用品のほかに輪ゴムや風船といった日用品にも使用されています。
使用される分野 | 製品 |
自動車部品 | タイヤ、防振ゴム |
工業用品 | コンベヤベルト、ホース、接着剤 |
日用雑貨 | 靴底、輪ゴム、風船 |
参照:
・ゴム協会「ゴム超入門講座~ゴムってどんなもの?~」〈第61回 秋期ゴム技術講習会〉「天然ゴムってどんなもの?」
・新版ゴム技術のABC 編集・発行:日本ゴム協会東海支部
・イソプレンゴム 発行所:株式会社大成社 著者:小室経治、上田明男、和田克郎、和久哲夫