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ゴムと金属などを接着する方法の1つとして、加硫接着(かりゅうせっちゃく)という技術があります。
加硫接着は一般のご家庭などで接着剤を使用し接着する汎用接着法とは違い、接着剤を塗布した被着体とゴムを同時に加硫させることにより接着する方法です。

 

加硫接着のメリット・デメリット

加硫接着を用いるメリットとして、
・汎用接着法とは違い、より強固に接着ができる
・接着剤の塗布量が均一にしやすく、金型内で接着するので、寸法精度が高い
・接着剤のはみ出しなどが起こらないため、仕上がりがきれい
・アッセンブリー工程の省略によるコスト低減
などが挙げられます。

 

デメリットとしては、
・成形に使用する金型や、接着剤を被着体へ塗布する設備の導入コスト
・使用する接着剤が、温度、湿度などの環境に影響されやすい場合が多く、保管条件や製造条件の設定が難しい場合がある
などが挙げられます。 

 

加硫接着は、ゴムを接着する方法の中でも優れた接着性を持つため、積極的な導入が推奨されます。
一方で、ゴムの配合設計や使用する接着剤の選定を誤ると、ゴムの寿命や特性を損なう可能性があり、最悪の場合には破損や機能不全につながることもあります。そのため、加硫接着の設計は、技術を有するメーカーに依頼することが重要です。

 

加硫接着の工程

・被着体の洗浄
 金属などの被着体表面に、油や錆などがあると、接着不良を起こしてしまうので、有機溶剤などを使用し脱脂・脱錆を行います。

・被着体の表面処理
 機械的処理:サンドブラスト等を用い、表面に凹凸を与えることにより、被着体の接着面積を増やします。
 化学的処理:被着体と接着剤のなじみ(濡れ性)の改善や、化学吸着をしやすくするために実施します。

・接着剤の塗布
 表面処理をした被着体を「接着剤へ浸漬」、「スプレーで塗布」、「手塗り」などの方法で、接着剤を塗布します。

 

金型へ接着剤のついた被着体を仕込み(インサートし)、未加硫のゴムと一緒に成形します。

上記以外の工程は通常のゴム加工と同様の工程となります。
通常のゴム加工は「ゴムの成形」をご確認ください。

 

 

加硫接着のメカニズム

加硫接着も汎用接着法も、化学的な共有結合やイオン結合、電気的なファン・デル・ワールス力、物理的なアンカー効果などを足し合わせて接着強度を出しています。
加硫接着の場合は化学的な共有結合が主になります。
被着体-接着剤、接着剤-ゴムのそれぞれの界面でどのような作用が働いているか、例を右図に示します。

化学的な結合や、架橋がそれぞれの界面で起こることにより、
接着力を発揮していますが、界面に異物や、各素材が改質してしまうなどすると、接着力の低下や、そこを起点に接着剥離を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。

 

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加硫接着工程で気を付けること

加硫接着で主に起こる不具合は、接着不良による接着剥離です。

接着剥離の原因としては
・被着体の洗浄不良や表面処理不良
・表面処理後や接着剤表面の汚れ、異物の混入や、保管中の光、熱、加水分解などによる改質
・接着剤の膜厚が薄い、不均一、厚いなどの不適切な塗布
・ゴムのスコーチ
などがあり、適切な設備、方法で加工できるメーカーを選定することが重要です。

また、接着剥離が発生した場合は、剥離面を観察することが重要です。
被着体と接着剤の界面、あるいは接着剤とゴムの界面など、どの部分で剥離が起きているかを確認することで、原因を絞ることができます。

 

 

加硫接着を用いた製品

ゴムと他材質からなるもので、且つ 大きな荷重がかかる製品に多く使用されています。

使用される分野     製品名
自動車・建築用部品 振動体マウント用の防振ゴム
工業用部品 摺動部のオイルシール
工業用部品 搬送用ローラー

 

 

参照:ゴム用加硫接着剤           岩澤 登代司(1999)
   新版ゴム技術のABC         《編集・発行》日本ゴム協会東海支部

   ゴム・プラスチックス材料のトラブルと対策

 

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