シリコーンゴム(Q)とは?
~特性と使用用途について~
シリコーンゴムは環状シロキサンを開環重合することにより製造される合成ゴムです。
シロキサン結合(-Si-O-)は、炭素(-C-C-)結合と比べ結合エネルギーが高く、非常に安定しています。シリコーンゴムは成形後、残存する低分子量シロキサンを除去し、物性を安定させるために2次加硫します。低分子量シロキサンが残存すると、接点、マイクロモーターなどの近傍にほぼ密閉状態で使用した場合、接点の導通不良、モーターの作動不良が起こる可能性があります。
シリコーンゴムは、シリコンゴムとも検索されますが正しくはシリコーンゴムの表記が正しいです。
シリコーンゴムは一般的に絶縁性のゴムですが、導電性のグレードもあります。
VMQ(代表)の構造

VMQ(代表)のポリマー

シリコーンゴム(Q)の特徴

※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる

優れた耐寒性 ・ 耐熱性 ・ ガス透過性

人体に対して安全

高温・加圧水蒸気で加水分解
・長所
シリコーンゴムはシロキサン結合(-Si-O-)を有するので、結合エネルギーが高く、一般ゴムと比べて耐熱性が優れています。200℃以上の環境でも特性に変化なく使用することができ、高温環境下で使用する製品に適しています。
また、耐寒性も非常に優れており、一般ゴムの脆化点が-20℃~-30℃に対し、シリコーンゴムは-60℃~-70℃です。電気特性、撥水性、耐水性、耐候性、耐オゾン性にも優れており、経年変化によるひび割れや劣化が起きにくい特徴をもちます。
化学構造上安定しており、安全性が高いので、医療用ゴム栓やキッチン用品に多く利用されます。
また、流動性が高いため成形が容易であり、着色性にも優れているので、顔料を添加することで多種多様な色の製品を作ることができます。
・短所
機械的強度や耐摩耗性が劣ります。また、常圧下では物性の変化はないですが、高温での加圧水蒸気により、シロキサン結合が加水分解し物性が低下します。
耐加水分解性に優れたグレードもあり、使われる用途によって選択されています。
・側鎖
シリコーンゴムの側鎖に一部フェニル基などを導入することで、機械的強度等の欠点が改善されます。主に5つのタイプがあります。
①ジメチルシリコーンゴム(MQ)
側鎖がすべてメチル基で導入されています。
他のシリコーンゴムと比べて圧縮永久ひずみ、耐熱性が劣ります。高引裂きゴム、スポンジなどに使用されています。
②ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)
MQのメチル基の一部をビニル基に置換したものです。
現在市販のシリコーンゴムの大半を占めています。加硫特性、圧縮永久ひずみが改善されています。
③フェニルメチルシリコーンゴム(PMQ)
MQのメチル基の一部をフェニル基に置換したものです。
耐寒性が非常に優れており、超低温用ゴムなどに使用されています。
④フェニルビニルメチルシリコーンゴム(PVMQ)
VMQのメチル基の一部をフェニル基に置換したものです。
PMQと同様に耐寒性に優れ、かつ機械的強度、難燃性、耐熱性も改善されています。
⑤フロロシリコーンゴム(FVMQ)
メチルトリフルオロプロピルシロキサンに少量のメチルビニルシロキサンを共重合したものです。
耐油性、耐熱性が改善されています。
シリコーンゴム(Q)の主な物性値
硬さ( デュロA) | 30 | 50 | 70 |
引張強さ( MPa ) | 9.0 | 9.0 | 7.0 |
伸び( % ) | 1000 | 400 | 230 |
使用温度( ℃ ) | -50~ 200 | ||
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1011~ 1015 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
シリコーンゴム(Q)の主な用途
シリコーンゴムは、耐寒性、耐熱性など高機能な特性を兼ね備えていることから、自動車部品、建築分野、医療分野など幅広い分野で使用されています。
使用される分野 | 製品 | ||
自動車部品 | センサー類の保護チューブ、点火系配線、シールストリップ | ||
建築材料 | ゴムベラ、防振材 | ||
電気用ゴム部品 | 耐熱電線、キーボード用コンタクトラバー | ||
工業用品 | テープ、Oリング、パッキン、ブッシング、オイルシール、チューブ | ||
医療用品 | カテーテルチューブ、ラリンジアルマスク、靴、耳栓 |

参照:
・新版ゴム技術のABC 編集・発行:日本ゴム協会東海支部