クロロプレンゴム(CR)とは?
~特性と使用用途について~
クロロプレンゴム(CR)は1931年に初めて上市され、合成ゴムの中で最も古い歴史をもっています。
CRのモノマーはクロロプレンモノマー1種類で、アセチレン法とブタジエン法の2種類の方法で合成されます。一般的にはブタジエン法が用いられています。
重合工程以降は同じで、乳化重合によってCRは製造されます。CRの骨格の基本構造は重合温度によって異なり、4種類存在します。中でも多くの割合を占める1,4-トランス結合の量が、機械的強度、接着性、耐寒性、耐熱性、といった特性に影響します。
CRのグレードは主に重合温度と重合反応時に用いられる分子量調整剤の種類によって決まります。
クロロプレンモノマー

CRのポリマー

重合温度 | 1,4-トランス結合 | 物性の変化 | ||||
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結晶化速度 | 機械的強度 | 接着性 | 耐寒性 | 耐老化性 | |
40℃ | 92.0% | ![]() |
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10℃ | 93.2% | |||||
-20℃ | 95.8% | |||||
-40℃ | 96.6% |
重合温度によって1,4-トランス構造の量が変わり、結晶化速度に影響します。重合温度を低くして1,4-トランス構造の量を多くすると、結晶化速度が速くなり、機械的強度と接着性が増しますが、耐寒性と耐老化性は悪くなります。結晶化速度を遅いCRでは逆の特性をもちます。
クロロプレンゴム(CR)の特徴

※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる

様々な特性がバランスよく優れる

加工性が良く扱いやすい
・長所
主鎖中の二重結合に電子求引性の塩素が直接結合していることにより、ほかのジエン系と比べて耐熱性、耐オゾン性、耐候性、耐油性に優れています。他に、加工性、機械的強度、難燃性、接着性などの特性についてバランスが取れていることも長所といえます。
CRはポリマー重量の約1/3の塩素を含むため、自己消火性をもちます。
・短所
欠点の少ないCRですが、耐寒性は比較的低いため、低温用途には向きません。
・CRのグレードの違い
クロロプレンゴムは重合時に使用する 分子量調整剤の種類により、以下の3タイプに大別されます。
①メルカプタン変性タイプ
CRの標準的なタイプで、バランスの良い物性を示します。
②キサントゲン変性タイプ
分子鎖の末端の反応性が高く、高分子量化や網目構造が発達しやすいです。
そのため、機械的強度と防振特性に優れ、配合設計において高充填が可能です。
③硫黄変性タイプ
ポリマー中に結合エネルギーの低い硫黄結合をもつため、以下の特徴があります。
・素練りによる粘度低下が大きい。
・金属酸化物のみで容易に加硫できる。
・機械的強度に優れる。
・耐熱性に劣る。
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メルカプタン
変性タイプ
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キサントゲン
変性タイプ
|
硫黄変性タイプ
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||||
引張強さ
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○
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◎
|
◎
|
||||
防振特性
|
○
|
◎
|
△
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耐久疲労性
|
○
|
◎
|
◎
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||||
耐熱性
|
◎
|
◎
|
△
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||||
圧縮永久ひずみ
|
○
|
○
|
△
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素練り加工性
|
○
|
○
|
◎
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クロロプレンゴム(CR)の主な物性値
硬さ( デュロA ) | 40 | 50 | 60 |
引張強さ( MPa ) | 12.0 | 15.5 | 18.0 |
伸び( % ) | 850 | 550 | 350 |
使用温度( ℃ ) | -30~ 120 | ||
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1010~ 1012 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
クロロプレンゴム(CR)の主な用途
CRはある程度の機械的強度と種々の耐性を持つことから、様々な分野で使用されています。また、結晶性を高めたグレードの接着剤としての用途もCRの特徴です。
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メルカプタン
変性タイプ
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キサントゲン
変性タイプ
|
硫黄変性タイプ
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主な用途
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工業用品
電線、ケーブル
ガスケット、シール
接着剤、浸漬製品
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自動車用ブーツ
ホース、防振ゴム
接着剤、浸漬製品
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伝動ベルト
ウェットスーツ
スポンジ、空気バネ
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参照:
・亀澤光博(2000)「クロロプレンゴム」奥寺通夫・粷谷信三・西敏夫・山口幸一『ゴムの事典』pp.148-150 朝倉書店
・萩原省吾(2016)「ゴムの工業的合成法 第14回 クロロプレンゴム」『日本ゴム協会誌』第89巻 第11号 pp.330-335 日本ゴム協会