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本コラムは、前回のコラムに引き続き、低温度域帯での使用に関わる「耐寒性」について解説します。前回は、温度が下がるとポリマーの分子運動(ミクロブラウン運動)が小さくなりゴムが硬くなることを、データとともに解説しました。
まだご覧になっていない方はぜひこちらもご覧ください。(耐寒ゴム①)
今回は、ゴムの耐寒性がどのように決まるのかを、ゴムの分子構造に注目して解説します。

 

1. 耐寒性はゴムのどの性質に影響されるのか?

前回、ミクロブラウン運動の大きさによってゴムの硬さが変わることを説明しました。
分子運動が大きいと柔らかく、小さいと硬くなります。

この分子運動に影響する主な要素は、次の3つです。

隣り合うポリマーの主鎖同士の距離が近くなると、分子間力が強くなります。
(身近な例では、水の表面張力があります。コップの縁より少し多く水を入れても、表面が盛り上がってこぼれないのは、水分子同士が引き合っているためです。)
分子間力が強くなると、主鎖同士が引き付け合い、分子運動が妨げられます。

側鎖とは、主鎖から小さく枝分かれした構造をしていて、いわば主鎖の装飾のようなものです。
この置換基はいくつか種類があり、種類や数によって耐寒性に影響が出ます。

配合する資材ごとの耐寒性にも影響を受けます。
特に粘性成分が多い資材や、ポリマーと結びつきが大きい資材は影響を受けやすい傾向があります。

2. 主鎖の構造

多くのゴムは、主鎖が炭素結合(-C-C-)で構成されていますが、その結合の方法は大きく分けて2種類あります。

・飽和結合(単結合のみ)
・不飽和結合(二重結合を含む)

飽和結合と不飽和結合の話は、耐熱性のコラムにも記載がございますので、ご興味がある方は是非確認してください。(ゴムの耐熱温度コラムはこちら)
以下の図は、飽和結合の代表例であるポリエチレン(樹脂)とEPDM(ゴム)、そして不飽和結合の代表例である天然ゴムの化学構造を示しています。

画像1-3

図からわかるように、飽和結合は直線的な構造になりやすく、不飽和結合は二重結合の影響により、ジグザグと折れ曲がった立体構造になります。

この違いにより、不飽和結合は主鎖同士の距離を保ちやすくなります。
その結果、分子間力が小さくなり、分子運動がしやすくなるため、飽和結合と比べて耐寒性に優れる傾向があります。

なお、過去のコラム「ゴムの名前」では、ゴムの名称から飽和結合・不飽和結合を見分ける方法も紹介しています。
こちらもあわせてご確認ください。(ゴムの名称コラムはこちら)

ここまでは、主鎖が炭素(C)で構成された材料について説明しました。
続いて、低温特性に優れる材料として知られるシリコーンについても見ていきます。

画像2-2

多くのゴムは、主鎖が炭素(C)の連なりで構成されています。
一方、シリコーンゴムは、ケイ素(Si)と酸素(O)が交互につながる構造をしています。
このSi-O結合もC-C結合と同様に分子運動を行いますが、より動きやすい特徴があり、分子運動が活発であることから、 
低温性が非常に優れる材質となっています。

3. 側鎖の構造

側鎖とは、主鎖から枝分かれした部分で、「置換基」とも呼ばれます。
通常は水素(H)が付きますが、メチル基やフェニル基、極性基などに置き換わることもあります。
ここでは、それぞれが低温特性にどのように影響するかを説明します。

鎖にメチル基が置換されているポリマーの代表としてEPDMがあります。

画像3-2

鎖の構造で隣り合う主鎖との距離の話をしましたが、EPDMはメチル基があることにより、隣り合う主鎖との間隔を空けられます。
また、EPDMはエチレンとプロピレンから作られており、プロピレンの割合が多いほどメチル基が増え、低温特性が良くなる傾向があります。

余談ですが、主原料をエチレンのみで合成して製造されるポリマーは、一般的に「ポリエチレン」と呼ばれるプラスチックです。構造としては、EPDMからプロピレンを除いたものに近いと考えられます(厳密には多少の違いがあります)。
メチル基が無いポリエチレンは、隣り合う主鎖の距離が近く、分子間力が大きいため、分子運動が停滞してしまい、ゴムのような弾性はありません。

画像4-1

また、主鎖に二重結合を持つ天然ゴムやイソプレンゴムにもメチル基は付いていますが、隣り合う主鎖との距離は、メチル基で取られる間隔よりも、主鎖の構造によって取られる間隔の方が大きくなります。
そのため、耐寒性に与える影響はメチル基よりも二重結合による主鎖構造の方が大きくなります。さらに、主鎖にメチル基が付くことで分子運動の妨げとなるため、結果として、主鎖に二重結合がありメチル基を持たないブタジエンゴムの方が、耐寒性が良い傾向があります。 

極性基を有する代表的なポリマーとして、NBR、CR、FKMがあり、側鎖にはそれぞれCN(ニトリル基)、Cl(塩素)、F(フッ素)が付いています。
極性基に含まれる極性原子は強い分子間力を発生させ、耐油性を向上させる一方で、分子運動が低下する影響により、耐寒性を低下させてしまいます。
(なお、極性基によって耐油性が向上する理由については、別途コラムで解説予定です。)
また、NBRなど一部の極性基を有するポリマーは、極性成分と非極性成分の割合をある程度コントロールできるため、トレードオフの関係にある耐寒性と耐油性を調整することが可能です。 

画像5-1

耐寒性はゴムの主材質であるポリマーの影響が大きいですが、使用する配合資材によっても影響を受けます。
影響を与える資材とその理由、影響度については、以下の表にまとめます。

資材名

影響度

理由

可塑剤などの

オイル分

添加するとゴム内部に取り込まれ、一見すると固体のように見えますが、実際にはポリマーの隙間に入り込んでいる状態です。ミクロの視点では液状であり、粘性成分が大きい特徴があります。
可塑剤はポリマーと同様に、液状では分子運動をしていますが、低温になると分子運動が小さくなるため、添加されたゴムは硬くなってしまいます。
また、使用する可塑剤の凝固温度が低いほど、相対的に耐寒性の良いゴムになります。

硫黄などの加硫剤

加硫剤はポリマー同士を結合(架橋)する役割を持ちます。
ポリマーの結合部は分子運動が制約されるため、架橋数が多くなるほど耐寒性は悪化します。

カーボンブラックやシリカなどの補強剤

カーボンブラックやシリカは、表面の官能基などがゴムポリマーと結合することで、補強効果を発揮します。
補強された部分では分子運動が制約されるため、補強度合いが高いほど耐寒性は悪化します。

補強性のない

充填剤など

補強性のない充填剤は、ポリマーの分子運動を妨げにくいため、耐寒性への影響は小さいです。

 

ゴムの耐寒性はポリマーに依存する部分が大きく、主鎖や側鎖の構造により左右されます。
耐寒性を含め、すべてのゴムには得意・不得意があるため、使用環境に適した材料を選定することが重要です。
ゴムノイナキでは、耐寒性を含めた使用環境に応じたゴムの選定が可能です。また、既存材料で適合するものがない場合には、オリジナル材料の検討にも対応しています。
これまで環境に適応できるゴムが見つからずお困りの際は、ぜひ一度ゴムノイナキまでお問い合わせください。

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