スチレンブタジエンゴム(SBR)とは?
~特性と使用用途について~
SBRはスチレン(styrene)とブタジエン(butadiene)を共重合した合成ゴム(synthetic rubber)です。
スチレン・ブタジエンゴムは天然ゴムに近い性質をもち、低価格なので合成ゴムの中でも最も多量に生産・消費されています。品質も安定しており、異物が少ないです。
SBRは乳化重合SBR(E-SBR)と溶液重合SBR(S-SBR)の2種類の重合方法があります。
乳化重合SBR(E-SBR)
ラジカル重合で製造されており、標準的なものはスチレン含有量が23.5%です。タイヤ、防振ゴム、一般工業用品などに使用されており、E-SBRの生産割合はSBRの約80 %を占めています。
溶液重合SBR(S-SBR)
アニオン重合で製造されており、E-SBRと比べると、分子構造の自由度が高いです。目的に応じてポリマー構造や末端修飾を選択できるので、生産量は徐々に増加しています。制動性と低燃費性を併せ持つ低燃費タイヤなどに使用されています。
SBRの構造

SBRのポリマー

スチレンブタジエンゴム(SBR)の特徴

※一般的な配合のデータであり、配合によっては異なったデータとなる

加工性に優れ、品質が安定

合成ゴムの中で最も生産・消費されている

耐候性に劣る
・長所
SBRは物性ばらつきが少なく、加工性も優れています。また耐熱性、耐摩耗性、耐老化性が良好です。
NRは超高分子量成分を含むことから素練りが必要ですが、SBRは適当な粘度に調整してあるので、素練りは行わずに混練りすることができます。
・短所
NRと比べて機械的強度が劣ります。加硫も遅いので、加硫促進剤をNRより多量に用いる必要があります。
SBRは二重結合を有するため、耐候性に劣ります。
・スチレン含量によるグレードの違い
E-SBRは、スチレン含量が高くなると、ベンゼン環の存在のため分子間力が強くなり、引張強さは大きくなります。しかし、分子鎖の熱運動は抑制され、弾性、耐寒性は低下します。
S-SBRは、分子量、分子量分布、ブタジエン部分のミクロ構造、分子設計の自由度が高いです。ブタジエン部分のビニルを約10~80 %の範囲で可変できるので、スチレン含量との組み合わせでガラス転移温度(Tg)を変化させることができます。
スチレンブタジエンゴム(SBR)の主な物性値
硬さ( デュロA ) | 30 ~ 100 |
引張強さ( MPa) | 5.0 ~ 20.0 |
伸び( % ) | 100 ~ 800 |
使用温度( ℃ ) | -40 ~ 80 |
体積抵抗( Ω・cm, 25℃ ) | 1010~ 1015 |
※上記特性データについては参考値であり保証値ではありません
スチレンブタジエンゴム(SBR)の主な用途
SBRは機械的強度、耐摩擦性等の性能バランスに優れ、加工性がよいため自動車タイヤ、防振ゴム、一般工業など様々なゴム製品に使用されています。
ただし、耐油性が劣るため、パッキン類やオイルシールには不向きです。
使用される分野 | 製品 |
自動車部品 | タイヤ、サイドウォール、カーカス |
工業用品 | ベルト、ホース、ブロックゴム |
日用雑貨 | 運動用品、履物 |
参照:
・服部岩和(2000)「スチレン・ブタジエン共重合ゴム」奥寺通夫・粷谷信三・西敏夫・山口幸一『ゴムの事典』朝倉書店