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ゴム屋さんのひとりごとへの問合せで、防振ゴムのことについて聞かれることがありますが、振動・防振をしっかり理解しようとすると、ある程度の数学レベル の知識が必要となり、ご質問者様によってはご理解していただけない場合がございます。(汗)

その場合は要点だけをかいつまんでお伝えしますが、恐らくご質問者の中には、理解できずモヤモヤが残ってしまっている方もいらっしゃるのではないかと思います。

そこで本コラムでは、振動・防振について難しい計算式や言葉もできるだけ分解し、分かりやすく説明させていただくことで、お読みになるほとんどの方に理解できるようなコラムにしたいと思います。

また「計算式なんて興味ない。」という方は、青字の部分を飛ばして読んでいただければ、ある程度理解できるように記載します。 

 

1. そもそも振動とは?

振動を国語辞典で引くと「揺れ動くこと」と書かれています。
以下モデルは、おもちゃのびっくり箱が、金属バネで連続して伸び縮みする様子を描いたものです。

1振動とは

このように、「一点を中心にした往復する動きを周期的に行う事」を振動といいます。
振動体の様子を時間経過で、グラフに表すと以下のように表現します。 

2振動とは

このグラフを表す計算式は「y=Asin(ωt+Φ)」となり、各変数の意味は以下の通りです。

y=振動体の位置
A=振幅(最大の変位) ※上記の場合振幅は±1と表現されます。
ω=角振動数(振動の速さ、周波数に置き換え可能)
t=時間経過
Φ=初期位相(振動体の初期位置)

このように振動は三角関数のsinを使用し、各変数を代入することで振動体yの位置を計算できます。
また三角関数sinを使用していることから、上記計算式からなるグラフをサイン波(Sine Wave)といいます。

2. 弾性体を介した際の振動伝達率

振動体と被振動体をボルトなど変位がないもので直接繋ぐと、振動体から発生する振動エネルギーは被振動体へ直接伝達し、振動伝達率は常に100%になります。
(厳密に言えばボルトも変位をするため、振動伝達率は100%ではありませんが、今回は変位がないものと考えてください)

振動体と被振動体を変位がないもので繋いだ場合
2振動体と被振動体を変位がないもので繋いだ場合

一方で、振動体と被振動体の間にバネやゴムなどの弾性体を介すると、被振動体へ伝える振動エネルギーは、以下3項目によって変化し、増幅したり減少したりします。

バネ定数(バネの硬さ や 長さ)
・振動体の質量
・振動体が発生する振動の周波数 (振動の速さ)

振動体と被振動体を弾性体で繋いだ場合
2振動体と被振動体を弾性体で繋いだ場合

振動伝達率は、振動体から被振動体へどれだけの振動の力を伝えるかを示した割合の数値です。
計算式は以下になります。

振動伝達率計算式

振動伝達率が100%以上の場合は、被振動体の振動の力が振動体の振動の力を上回っていることを表し(=増振)、
100%未満の場合は、被振動体の振動の力が振動体の振動の力を下回っていることを表します(=防振)。

次の項目では、なぜバネを介した際に振動伝達率が変わるのかを解説します。

3. 振動できる・する物にある固有振動数

固有振動数とは、「被振動体が外力を受けない自由振動において、自らの性質のみによって決まる振動の周波数」になります。
この原理を用いた物として、木琴やメトロノームなどがあります。
木琴はバチ(振動体)で鍵盤を叩くことにより鍵盤が振動し音を出しますが、固有振動数があることで、常に同じ音が出るようになっています。
また長さと質量(重さ)が異なることで、固有振動数が変わるので、鍵盤の質量(大きさ)が変わることで、音程が変わります。

メトロノームは一定のリズムを打つ音楽用具ですが、この決められたリズムが固有振動数になります。
またメトロノームの可動おもりの位置を変えることでリズムが早くなったり、遅くなったりしますが、それは振り子の重心が変わることによるものです。
メトロノームの場合は振り子運動ですが、振り子運動も一種の振動になります。

木琴
メトロノーム

このように、振動をする物を自由に振動させると、常に同一の振動数(振動の速さ)になり、この振動数は元に戻ろうとする復元力のリズムと、動きを続けようとする慣性のリズムが丁度釣り合う振動になります。
またこの固有振動数で振動することを共振と言い、同一エネルギーで振動数を変えた場合、共振した際は最大の振幅になります。

この固有振動数はHzで表すことができ、Hzとは1秒間に振動する回数を表す値で、1秒間に10回振動する場合は10Hzと表します。

またこの固有振動数は以下計算式で計算することができます。

固有振動数計算式

 前章の振動伝達率でバネのバネ定数(バネの硬さ ・ 長さ)や質量によって振動伝達率が変わると言いましたが、この固有振動数がバネ定数と質量から決まる事が、振動伝達率に大きな影響を与える事を次章で解説します。 

4. 振動数比によって振動伝達率が変わる?

振動数比とは固有振動数に対し、振動体の振動数の比率を現した数値になります。

計算式は以下の通りです。

振動数比計算式

例:固有振動数:10Hz 振動体の振動数:20Hz の場合、

例 振動数比計算式

 となります。 

また振動数比と振動伝達率は関係性があり、振動体と被振動体の間にバネを介した場合には、理論的には以下関係式が成り立ちます。

振動伝達率%計算式

この関係性をグラフに書くと以下のように表わせます。

グラフ 振動伝達率と振動数比の関係

※振動伝達率が100%だと、被振動の振動の力は振動体と同じ振動の力になります。
上記表は、理論上の振動伝達率と振動数比になるので、実際に測定をすると、若干のずれは発生しますが、大きくずれることはありません。

この表からどのようなことが言えるかというと、
・振動数比が0以上で√2以下の場合は振動伝達率が100%以上になるため、振動体の振動の力より実際の振動の力が大きくなってしまう。(振動の力が増幅)
特に振動数比=1(振動体の振動数が固有振動数と同じ)に近い場合、被振動体が受ける振動の力は非常に高くなり、バネやゴム、その他振動体などを大きくなった振動の力により、破壊してしまう恐れがあります。

・振動数比が√2以上の場合は振動伝達率が100%以下になるため、振動体の振動の力より実際の振動の力が小さくなります。(防振効果がある)

以上のことより、防振をするためには「振動体の固有振動数を、振動体の振動数より低く(1/√2 以下)抑えること」が重要であることと共に、設計を間違えて、固有振動数と振動体の振動数が近くなってしまった場合は、振動が増幅してしまい、最悪の場合は増幅した振動の力がバネやゴム、その他部品を壊してしまう場合があるので注意が必要です。

5. 防振設計を簡単に解説

防振設計をする場合、振動体の振動数はある程度決まった状態で、設計をすることとなると思います。
その場合の防振設計においては、いかに「固有振動数を小さくすることができるか」が重要になります。

再度、固有振動数の計算式を記します。

固有振動数計算式

固有振動数を変動することができるパラメータは、質量(重さ)、バネやゴムのバネ定数(硬さ や 長さ)になります。
弾性体にゴムを使用した場合、各パラメータを変動させると防振設計上どのようなことが起こるか、またそれにより製品全体の設計にどのような影響が出るか簡単に解説します。

質量を変更する場合

質量の変更 固有振動数 防振効果 その他製品に及ぼす影響
重くする 小さくなる 〇(防振方向) システム全体の重量が重くなる
軽くする 大きくなる  ×(増幅方向) システム全体の重量が軽くなる

 

振動体や、被振動体を重くすることにより固有振動数が小さくなるので、防振効果が出やすくなる反面、重量増により製品のハンドリングが悪くなるなど、扱いづらくなってしまうことがあります。
また軽くすることで防振効果が悪くなってしまうこともあるので、ハンドリング向上等を目的として製品を軽量化してしまうと、振動が増幅してしまうことがあるので、注意が必要です。

バネ定数を変更する場合

 バネ定数の変更手法   バネ定数   固有振動数  防振効果 その他製品に及ぼす影響
 ゴムの硬さ   柔らかくする  小さくなる  小さくなる  〇(防振方向)

・低振動数時(増振域)での振幅が大きくなる
・ゴム自体の強度が小さくなることがあり
 耐久性を下げる可能性あり 

 硬くする  大きくなる  大きくなる   ×(増幅方向)   ・ゴム自体の強度を上げることができる 

ゴムの長さを変える

※同じ断面積
 同じ硬さの場合 

 長くする   小さくなる   小さくなる  〇(防振方向)

・低振動数時(増振域)での振幅が大きくなる
・防振ゴムのスペースが大きくなることで、
 製品全体が大型化する 

 短くする   大きくなる   大きくなる   ×(増幅方向)

  ・防振ゴムのスペースが小さくなることで、
   製品全体を小型化できる 

 

バネ定数を小さくすることにより、防振効果は大きくなりますが、振動体が動き始めた瞬間の低振動数時には一時的に振幅が大きくなってしまうことがあります。
またスペースの削減等のために、防振ゴムの全長を小さくしてしまうと、防振効果が小さくなってしまうので、その場合はゴムを柔らかくする等の対策が必要です。

以上のことより、防振性能を高めるためには、①システム全体を重くする事②使用するゴムをできるだけ柔らかくする事が有効になります。

防振ゴム選定の失敗事例

事例

結果

原因

対策

実振動に対し、固有振動数が近い物を選定

振動が増幅してしまう

固有振動数を考慮せずに選定してしまった

固有振動数に対し、実振動の

振動比が√2以上になる様に設計する

とりあえず柔らかい防振材を選定

柔らかすぎて圧縮時の変位を受け止めきれない

 

耐久性が足りない

動バネ定数を考慮せずに選定してしまった

最大荷重を考慮せずに選定してしまった

振動体の振動の力に対し、使用する防振ゴムがどの様な挙動を示すか予め確認をし、予測変位と荷重に対し、スペースや耐荷重が足りているか確認をする

防振ゴムを複数設置した際に、重心の偏りを考慮せずに設置

偏振動を起こしてしまう

重心を考慮せずに防振ゴムの位置を決定

それぞれの防振ゴムにバランスよく荷重が掛る様に防振ゴムを設置する

振動の方向を考慮せずに選定

横振動に対応しきれない

防振ゴムの形状、設置位置の選定ミス

防振ゴムの形状を変更する。

最悪横方向に防振ゴムを使用する。

 

まとめ

振動体の防振をするためには、振動体と被振動体の間に弾性体を入れることで防振効果を得ることができます。
ただし、適正な防振効果を得るためには、正確な計算が必要で、そのためには振動体などの重量、重心などの情報が必要になります。
正確な計算ができないと、防振効果が得られなかったり、最悪の場合増振してしまい、振動体や被振動体の破損に繋がってしまいます。
弊社にご連絡いただければ、「どのようなパラメータが必要な情報なのか」、また「その情報に基づいた最適な防振ゴム」の提供をすることができますので、振動のことでお困りの際は、是非弊社にお声がけ下さい!

また、このコラムをお読みの方は、「防振をするのにゴムではなく、金属バネでも問題ないのでは?」と思った方もいらっしゃるかと思います。
確かに金属バネ等の弾性体でも防振効果は得られますが、ゴムを使用するメリットも幾つかありますので、次回は「何故防振にゴムが選ばれるのか?」ということを題材にコラムを作成しようと思いますので、ぜひお読みください。

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